随分と前の話になりますが、湊川で1日だけのイベントがありました。
「湊川隋道〜水の記憶〜」と題されたものです。この隋道は一度大雨になれば川が氾濫を起こし家屋が流される。それを食い止める為に明治34年に造られたものです。阪神大震災以後、震災のダメージからその役割を終えたこの隋道を近代土木遺産として保存しようとする活動が起こり、「サウンド・ビジュアルインスタレーション」という、音と映像を使ってそこにしか立ち表れない唯一の空間を作り出すイベントでした。
ライフラインとは、電気・ガス・水道、そして今日ではインターネットも必要でしょう。住宅と住宅とは、そんなパイプですべてが繋がっているのですが、逆に考えると自立できないでいる。住宅は人々の生活を守る身近なそして重要なものですが、今の環境に満足している人は少ないのではないでしょうか。例えば震災後の新長田。閑散としていますよね?家はそれ自体では成り立たない。周りの環境が整ってこそ、豊かなものであってこそ、良い住宅は出来るのではないでしょうか。しかし、これこそが見せつけられた現実でした。私たちはあれだけのものの上に立っているのだと。
隋道の工事に何人の方が携わったのか、どれだけの時間をかけて人々の生活を支えたのか。そう思うと地上に建つ建築の何とひ弱なものか。尚且つあの隋道の空間自体の圧倒的な存在感、美しさ。100年経ってさらにその役割が持つ大きさがにじみ出たかのようです。
どうか、あの場所の歴史を忘れないでもらいたい。その上に生きている事の意味を。あの隋道は自分の祖父母や見知らぬ昔を思い起こしてくれます。神戸に住む者の責任を建築という立場ではなく住民として強く感じました。 |